私は平成2年に1級造園施工管理技士を取得しました。
しかし、学科試験には受かりましたが、実地試験ってどんなことをするのか、どんな問題が出るのだろうか等、不安要素がたくさんあった事を今でも良く覚えています。
幸いにそれまで高速道路のSA・PAの造園工事経験があり、この経験記述を作成することには何とか目鼻が立ったので、規定に沿って管理項目別(工程、品質、安全)に事前に経験記述を作成して、二次試験に臨場し書き終えた後も誤字脱字までないか何度もチェックして、試験会場に最後まで残り解答用紙を提出した時は、長い間勉強して来た苦労からの開放感で一杯でした。
そこで、この資格の取得者として、最重要課題である経験記述について、拙い内容だと思いますが具体的な解答例を示して、参考にして頂ければと思います。
令和3年度から建設業法の改正により、「学科」と「実地」の両試験を「第一次検定」と「第二次検定」に再編されています。
又、施工管理技術検定試験において不正受検が連続して発生したことを踏まえ、有識者による「技術検定不正受検防止対策検討会」が設置され、同検討会の提言がとりまとめられ公表されました。
詳細については、下記の国土交通省報道発表資料をご覧ください。
施工管理技術検定試験に関する不正防止対策について(令和2年11月10日付)
その中でも、(2)受検者及び証明者による虚偽申請の抑止のために、特にこの記事関連として、
[2]試験問題の見直しがあります。
それは、受検者が模範解答例の暗記では解答できないような問題へと見直しを検討。とあり、この記事のスタイルや内容を丸暗記しても対応が難しくなる可能性があります事も予めご承知おきください。
本記事は、あくまで造園工事を実際に経験され、それを基に技術検定を受験しようとする方々に少しでも参考にして頂けるように書いたものであり、無経験受験者の虚偽申請をほう助する目的で公開しているものではありません。
くれぐれも不実記載をなされないようにお願い致します。
万が一、そのような事案が発生したとしても当方は一切関知致しませんので、悪しからずご了承ください。
厳しい事を申し上げますが、ご理解の程お願い申し上げます。
検定申込受付期間及び検定日程は下記の通りに発表されています。
【検定申込受付期間】
書面申込:令和6年5月7日(火)~5月21日(火)
インターネット申込:令和6年5月7日(火)~5月21日(火)23:59
【検定日程】
1級第一次検定
試験日:令和6年9月1日(日)/合格発表日:令和6年10月3日(木)
1級第二次検定
試験日:令和6年12月1日(日)/合格発表日:令和7年3月5日(水)
第二次検定全体の概要について
令和3年度の二次検定は従前と同じ形式で、問題1、問題2の必須問題2問と、問題3、問題4、問題5の3問の選択問題から自分で1問を選択し、合計3問を解答する形となっていました。
1級土木施工管理技士の二次検定では、「監理技術者としての知識を問う問題」を趣旨とする新たな問題が出されていましたが、造園の1級ではそれがありませんでした。
しかし、令和4年度以降もこのスタイルのまま出題されるとは限りませんので、予めご承知おきください。
二次検定だからといって実際に現場で植付作業したり、樹木の剪定をしたりする訳ではありません。
あくまで、あなたが現場代理人、主任技術者(監理技術者)として経験して得た知見を記述式に問うもので、学科試験のような四枝択一式問題ではありません。
問題1については、下記に詳細を示す通り、令和3年度は2年度と同じく
「あなたが経験した主な造園工事のうち、工事の施工管理において「工程管理」又は「品質管理」上の課題があった工事を1つ選び、その工事について以下の設問(1)~(5)について答えなさい。(造園工事以外の記述は採点の対象となりません。)」と「工程管理」又は「品質管理」上の課題と処置を記述するものでした。
問題2については、その中に設問が4つほどあり、更にその1問毎に2~3問に分かれているので、総設問数は10~12となります。これをすべて解答することになります。
以上が必須問題の概要です。
選択問題については、3問の内1問を自分で選んで解答するものです。
1問だけの解答では、間違った時のためと思って2問以上解答すると、いずれも採点対象外となりますからご注意下さい。あくまで1問のみです。
何が出るかは分かりませんが、私が受験した時はネットワーク式工程表の問題の出題頻度が高く、現に出題され、それを選択して解答した記憶があります。クリティカルパス、最遅完了時刻とか懐かしいですね。
しかし、ここで強調したいのは問題2の必須問題や、選択問題の1問が完璧に出来たとしても、問題1の経験記述がダメだと絶対に合格出来ません。
1級施工管理技士というのは、土木、造園でも同じことですが、特定建設業における営業所の専任技術者になれるということです。
特定建設業というのは、建築一式工事であれば6,000万円以上、その他工事であれば4,000万円以上の下請け契約の締結が可能な権利があり、それだけ大きな工事を協力業者を使って仕事をすることが出来ます。
特定建設業の営業所の専任技術者というのは、下請け協力業者の保護育成や、大規模な公共工事の施工など、社会的責任が重く、1級の資格者しかなれません。
従って、1級施工管理技士には、監理技術者として十分な経験と知識と遵法精神が求められるため、この経験記述が最重要とされる訳です。
それでは、実地試験の最重要課題である経験記述に的を絞って解答例を示しながら解説していきたいと思います。
経験記述について
工事の工程管理、品質管理、安全管理の課題の内容(背景及び理由を含む)に対し、あなたが現場で実施した処置又は対策を現実のものとして試験官に納得させる事が、合格のキーです。
例えは良くないですが、刑事事件で例えるなら、犯人しか知り得ない情報、即ち
多少、文章が下手くそでも、漢字を知らなくても、切実な現場実体験記述が何よりも迫力があるのです。
只、そこには専門用語や適格な数値の配置が必要です、何でも経験した事だけ単純に書けば良いと言うものではありません。
現場で体験した技術的課題です。
その問題が工事の工程、品質、安全に大きく関わるような事を記述しないとダメです。
現場代理人が決まらないとか、協力会社が確保できないとか、そう言う単純な事を聞いているのではなく、技術的な課題です。
出題項目
当然ながら、
- 工程管理、品質管理、安全管理がメイン
- この3つを前以って準備しておけば問題ない
- 逆にこの3つを事前に準備して、頭に叩き込んで置かないと絶対にダメ
試験現場で、即興で書ける人は相当頭が良いと思いますが、一般の方は事前準備が合格のコツです。
経験記述問題のスタイルは、このような形になっていると思います。
問題 1 あなたが経験した主な造園工事のうち、工事の施工管理において「工程管理」又は「品質管理」上の課題があった工事を1つ選び、その工事について以下の設問(1)~(5)について答えなさい。(造園工事以外の記述は採点の対象となりません。)
解答は、解答用紙の所定の解答欄に記述しなさい。
以下、解答例を赤文字で説明します。
(1)工事名を具体的に記述しなさい。
○○○○○○造園工事
受験申請時に書いた契約書通りの工事名を、正確に記載して下さい。
ただ、これは一番オーソドックスな事であって、令和6年度の1級造園施工管理技術検定申込受付期間は、令和6年5月7日(火)~5月21日(火)、1級第一次検定試験日が、令和6年9月1日(日)なので、受験申請後から試験日までに取り組んだ工事で書きたい場合もあると思います。
その場合、その工事名で経験記述を書いても実際にやったものであれば、不実記載にはならないと思います。
筆者の時は、その間にやった工事がなかったので、オーソドックスに受験申請時の記載工事について述べました。
(2)工事内容等
(1)の工事に関し、以下の①~⑤について具体的に記述しなさい。
①施工場所
○○県△△市□□町地先
契約書に記載の通りに書いて下さい。
② (ァ) この工事の契約上の発注者名又は注文者名
○○市○○土木事務所緑地公園課等
発注者の正確な呼称を書いて下さい。
(イ) この工事におけるあなたの所属する会社等の契約上の立場を、
解答欄の〔 〕内に該当するものに〇を付けなさい。
会社等の立場ですから、
工事主任、工務主任等の簡単に言えば肩書ですね。
役所に対する工事現場の肩書ではなく、社内の立場ですね。
「その他」に〇を付けた場合は( )に契約上の立場を記述しなさい。
とありますから、別の立場を書いたなら( )内に説明が必要です。
③工期
(自)平成○○年○○月○○日~(至)平成○○年○○月○○日
契約書に記載の通りに書いて下さい。
④工事金額又は請負代金額
¥○○,○○○,○○○円(消費税込み)
契約書に記載の通りに書いて下さい。
公共工事の場合、請負代金額(契約金額)とは、消費税込みの金額を言います。
変更増減があった場合は、税込みの最終設計変更金額を書いて下さい。
⑤工事概要
(ア)工事内容
「本工事は、設置後20年経過した○○公園の樹木、遊具等の施設を改修するものである。」とか、「本工事は、新設される○○自動車道○○線の○○サービスエリア(SA)の建築建物周囲の造園外構工事である。」など、工事目的、概要を記述すれば良いと思います。
(イ)工事数量(例:工種、種別、細別、数量、規格等)
下記のように数量総括表形式にした方が試験官に分かり易いと思います。
工事数量は(例:工種、種別、細別、数量、規格等)となっていますが、規格等ですから「単位」も入れることができますし、下のように入れた方が良いと思います。
又、植栽工と言っても高木、中木、低木植栽工があるので下のように「高中低木植栽工」「クスノキ他」「規格○○他」「全体数量○○本」等、まとめる方が良い思います。
規格表現は、一般的に高さはH、目通り幹周りはC、枝張りはWで通用すると思います。
(例)
工種 | 種別 | 細別 | 規格 | 単位 | 数量 |
植栽工 | 高中低木植栽工 | 真竹他 | H4.0他 | 本 | 400 |
植付工 | 地被類 | オカメザサ他 | 3本立他 | ㎡ | 390 |
張芝工 | 張芝A | ㎡ | 700 | ||
舗装工 | 陶板他 | 300×300×30他 | ㎡ | 390 | |
縁石工 | 切石他 | 150×150×600他 | m | 88 | |
遊具施設工 | すべり台 | 基 | 1 |
(ウ)現場の状況及び周辺の状況(必要に応じ、関連工事の有無等当該工事の施工に影響等を与える事項、内容等を含む)
(例)
新設の自動車専用道路のサービスエリア内の建物施設以外の造園外構一式工事であったので、工期順守は当然のこと、建築、駐車場舗装、電気、水道、空調設備関係業者等、多数業者との関連工程調整があり、毎週調整会議が発注者主催で行われた。
そのような中で植栽樹木の植付や、園路広場舗装等の工程、品質管理を行う必要があった。
(3)工事現場における施工管理上のあなたの立場を記述しなさい。
これは、工事現場における立場ですから
現場代理人、主任技術者(監理技術者)が良いと思います。
現場代理人、主任技術者(監理技術者)の兼務でも良いと思います。
(4)上記工事の施工において、課題があった管理項目名(工程管理又は品質管理)及びその課題の内容(背景及び理由を含む)を具体的に記述しなさい。
課題があった管理項目名
品質管理
課題の内容①
植栽の中心となる「真竹」が、建築工程の都合により植付時期が2月の真冬になり、植付不適期であったため、そのままでは活着率の低下が見込まれた。
課題の内容②
陶板舗装工の基礎コンクリート施工時期が、同様に、建築工程の都合により2月の寒冷期となり、日平均気温が4℃以下になる週間予報を基に、寒中コンクリートの対策が必要となった。
記述ボリュームを考慮して、2点記載しました。
(4)の課題に対し、あなたが現場で実施した処置又は対策を具体的に記述しなさい。
課題の内容①の対策
不適期施工の問題解決と竹の活着率向上のため、半年前から掘り取り仮植養生を行い、樹勢のよいものだけを搬入植付した。
課題の内容②の対策
①AE剤は、所要のワーカビリティーを得るのに必要な単位水量を減らせるほか、適切な空気量を連行することにより、コンクリートの耐凍害性も向上するので、AEコンクリートを使用することとした。
②打ち込み時のコンクリート最低温度は、基礎コンクリートの設計厚が50mmと薄いので、10℃以上とした。
③セメントは、寒中コンクリートの場合早強ポルトランドセメントか、普通ポルトランドセメントを用いることが多いが、部材厚が薄く水和熱に起因するひび割れが懸念されたので、高炉B種を使用することとした。
④初期凍害を防止するため保温養生と給熱養生を実施した。
具体的には、日中は、養生マットで覆い保温断熱養生を行い、夜間気温低下時には養生マットの上にブルーシートを併用し、ジェットヒーターでの給熱温風養生を行った。
又、コンクリート養生温度は、部材厚が薄いので10℃程度とした。
試験制度の再編について
冒頭に申し上げた通り、1級土木施工管理技士第二次検定では試験問題の改編かがなされ、「監理技術者としての知識を問う問題」として施工計画立案上における事前調査などに関する必須記述式問題が出題されました。
これらについての詳細については、小ブログ下記別記事にもう少し詳しく記載しておりますので、ご覧になってください。
1級土木施工管理技士が語る実地試験における経験記述の解答例【2021】試験制度の再編について(令和3年度)
注意事項
既にご承知の事と思いますが、安全確保の為、ガードマンの人数を増やしたとか、そんな単純な話は誰でも書けますし、そのような技術的課題はダメとなっていると思いますので、念の為申しておきます。
又、丸写しは絶対お止め下さい、これはあくまでヒントですから。
皆が皆、同じ内容では変ですし、俺一人位と思う人が1000人居たとしたら大変ですよ。
同じような回答だと、嘘だとばれます。
なぜなら試験(採点)官同士の連携で似たような解答についても話合われる、というような話を風の噂で聞いたことがあります。
その時点で他の記述問題が出来ていても一発で不合格になるそうです。
虚偽記載をするような人に、国家資格を保有する資格はないという考えですね。
せっかくの苦労が水の泡ですから、絶対にそれだけは止めて下さい。
あくまで、実体験に基づいて書いて下さい。
この記事は、先ほど申しましたようにあくまでヒントです、このように書けば必ず受かると保証するものではありません。
自己責任でよろしくお願いします。
おまけ
経験記述以外の必須問題1問と選択問題の1問の勉強方法ですが、これは実際に紙の上に書いて手と頭と目で覚えていくしかありません。
例えばネットワーク工程表を書いて、最重要経路であるクリティカルパスを計算して求めるとか、参考書の重要字句をマーカーで消して埋める練習をするとか、とにかく○×式ではなく、書いて覚えるしかありません。
そうしないと、緊張した試験現場では絶対に手が動きません。
私が受験した時は、わら半紙に書いて書いて書きまくり、その厚みが数センチになるほど自問自答しながら勉強しました。
今は、そんなものもうありませんが、懐かしい思い出です。
まとめ
最後にもう一度経験記述のポイントを言いますが、
あ~これは実際にやってないな、作り話だなと判断されたら、難しいと言う事です。
これも、風の噂で試験官のつぶやきを聞いた事がある人から、聞いた話ですけどね。
資格を取るのは、容易な事ではありませんが、努力した時間の多寡により合格率は変化します。
一度取れば、一生あなたのものです。
頑張って下さい!!
1級土木施工管理技士実地試験に関する記事もupしていますので、関心のある方はご覧になってください。
コメント
はじめまして。
2019年度の実地試験を受けようとしている者です。
とても参考にある記事を書いてくださり、
ありがとうございます!
初めて受験するので、情報を集めているところでして、
よろしければ1つ教えて頂きたいです。
経験記述の工事は申請時の工事のものしか
選択できないのでしょうか?
こちらこそ、はじめまして。
お問い合わせ頂きありがとうございます。
さて、経験記述の工事ですが、受験申請内容と首尾一貫させる意味では、同一工事が望ましいと思います。
私の時は、素直にそのようにしましたし、それが無難であることは間違いないと思います。
しかし、受験申請後に経験した工事がある場合もあり、それを記述したいと思われる方もいらっしゃると思います。
試験の主眼は、あくまでも経験記述の信ぴょう性、専門性の内容ですので、受験申請時の工事名と、経験記述の解答工事名の不一致は問題にならないと思います。
ただ、私は採点官ではありませんから、断言は出来ませんが、そのように考えております。
宜しくご判断ください。
お返事いただき、ありがとうございます。
応募した後に実施した工事のほうが、安全管理など様々な面で印象に残ることがおおかったため、そちらの工事を記載しようと思っていたのです。
試験まであと少ししかないですが、こちらのページを参考に頑張ってまとめてみようと思います。
ありがとうございました。
拙い記事ですが、少しでもお役に立てれば幸いです。
是非、頑張って合格されますよう祈念します。
たすかります。令和2年12月に実地試験を受けます。
コメントを頂きありがとうございます。
ご健闘をお祈りいたします。