インチとミリ或いはセンチで具体的に悩むアイテムの一つとしてインチネジとミリネジの違いがあると思います。
違いがある事は分かっていても、具体的にどう違うのか皆さんも漠然とした印象をお持ちだと思います。
筆者もインチネジはピッチが粗いと言う程度の捉え方でしたが、今回CADで断面山形基本図を書いてみて、これらは全く別物の規格で相容れる事はないなと言う印象を強くしました。
又、ほぼ同外径のインチネジとミリネジの互換性についても、各寸法を表にして比較確認してみました。尚、インチネジとミリネジの双方ともに並目を基準に比較検討しています。
ちょっと見にくいかも知れませんがそれらの違いを良くご覧ください。
インチネジとミリネジの互換性
仮にインチネジが必要な場面があったとして、手元にあるミリネジで代用が出来ないかなとか、その逆にミリネジが必要なんだけど、手元にはインチネジしかないような場合に代用が効かないものかなどと考える場面があると思いますが、結論を先に申し上げると
- 外径寸法がほぼ同じでも、ネジの進み方を表すピッチの違い、谷の深さの違いなどがあり一山は入ったとしても、そこからが進まず無理やりに締め付けたとしてもネジの有効断面積の違いにより強度的にも問題が生じて、お勧めする事は出来ません。
- 基本的には、インチネジとミリネジは全くの別物とお考え下さい。
そこで、インチネジとミリネジの近似外径寸法同士の基準寸法比較表を次に掲載しますので、細かいですが数値的な違いが全てに亘りあって、互換性がほぼない事がお分かり頂けるものと思います。
基準寸法比較表(互換性確認)
インチネジNo.1から1インチまでのミリネジ近似外径の基準寸法比較表です。
インチネジ | 互換性 | ミリネジ | ピッチ(P) | ひっかかりの高さ(H1) | 外径 (d) | 有効径 (d2) | 谷の径 (d1) | ねじ山数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
No. 1 | ✖ | 0.3969 | 0.210 | 1.854 | 1.598 | 1.425 | 64 | |
M1.8 | 0.3500 | 0.189 | 1.800 | 1.573 | 1.421 | |||
No. 2 | △ | 0.4536 | 0.246 | 2.184 | 1.890 | 1.694 | 56 | |
M2.2 | 0.4500 | 0.244 | 2.200 | 1.908 | 1.713 | |||
No. 3 | ✖ | 0.5292 | 0.286 | 2.515 | 2.172 | 1.941 | 48 | |
M2.5 | 0.4500 | 0.244 | 2.500 | 2.208 | 2.013 | |||
No. 4 | ✖ | 0.6350 | 0.344 | 2.845 | 2.433 | 2.156 | 40 | |
M3 | 0.5000 | 0.271 | 3.000 | 2.675 | 2.459 | |||
No. 5 | ✖ | 0.6350 | 0.344 | 3.175 | 2.764 | 2.487 | 40 | |
M3 | 0.5000 | 0.271 | 3.000 | 2.675 | 2.459 | |||
No. 6 | ✖ | 0.7938 | 0.430 | 3.505 | 2.990 | 2.647 | 32 | |
M3.5 | 0.6000 | 0.325 | 3.500 | 3.110 | 2.850 | |||
No. 8 | ✖ | 0.7938 | 0.430 | 4.166 | 3.650 | 3.307 | 32 | |
M4 | 0.7000 | 0.379 | 4.000 | 3.545 | 3.242 | |||
No.10 | ✖ | 1.0583 | 0.573 | 4.826 | 4.138 | 3.680 | 24 | |
M5 | 0.8000 | 0.433 | 5.000 | 4.480 | 4.134 | |||
No.12 | ✖ | 1.0583 | 0.573 | 5.486 | 4.798 | 4.341 | 24 | |
M6 | 1.0000 | 0.541 | 6.000 | 5.350 | 4.917 | |||
1/4 | ✖ | 1.2700 | 0.687 | 6.350 | 5.524 | 4.976 | 20 | |
M6 | 1.0000 | 0.541 | 6.000 | 5.350 | 4.917 | |||
5/16 | ✖ | 1.4111 | 0.764 | 7.938 | 7.021 | 6.411 | 18 | |
M8 | 1.2500 | 0.677 | 8.000 | 7.188 | 6.647 | |||
3/8 | ✖ | 1.5875 | 0.859 | 9.525 | 8.494 | 7.805 | 16 | |
M9 | 1.2500 | 0.677 | 9.000 | 8.188 | 7.647 | |||
7/16 | ✖ | 1.8143 | 0.982 | 11.112 | 9.934 | 9.149 | 14 | |
M11 | 1.5000 | 0.812 | 11.000 | 10.026 | 9.376 | |||
1/2 | ✖ | 1.9538 | 1.058 | 12.700 | 11.430 | 10.584 | 13 | |
M12 | 1.7500 | 0.947 | 12.000 | 10.863 | 10.106 | |||
9/16 | △ | 2.1167 | 1.146 | 14.288 | 12.913 | 11.996 | 12 | |
M14 | 2.0000 | 1.083 | 14.000 | 12.701 | 11.835 | |||
5/8 | ✖ | 2.3091 | 1.250 | 15.875 | 14.376 | 13.376 | 11 | |
M16 | 2.0000 | 1.083 | 16.000 | 14.701 | 13.835 | |||
3/4 | △ | 2.5400 | 1.375 | 19.050 | 17.399 | 16.299 | 10 | |
M18 | 2.5000 | 1.353 | 18.000 | 16.376 | 15.294 | |||
7/8 | ✖ | 2.8222 | 1.528 | 22.225 | 20.391 | 19.169 | 9 | |
M22 | 2.5000 | 1.353 | 22.000 | 20.376 | 19.294 | |||
1 | ✖ | 3.1750 | 1.719 | 25.400 | 23.338 | 21.963 | 8 | |
M24 | 3.0000 | 1.624 | 24.000 | 22.051 | 20.752 |
ピッチの違いとは?
インチネジとミリネジは、そもそもピッチに大きな違いがあります。
- インチネジは、1インチのネジの長さにどれだけの山数があるかによってピッチを表しますが、(25.4mm/山数)でミリネジのピッチと同様の山と次の山の中心間距離に換算出来ます。
「例」ユニファイ並目ネジ5/16-18 UNCの山数は18なので、
ピッチ P=25.4/18=1.411111・・・≒1.411mm となります。
ネジ山角度の違いは?
- インチネジとミリネジのネジ山角度については何れも60度と同じですが、前述の通りネジの進み方の量の違い、即ちピッチの違いが決定的です。
- インチ系ウイットネジ山角度だけが55度と違います。
インチネジとミリネジの見分け方
外形を見る
ぱっと見で一番分かり易いのが、ネジ山の粗さと谷の深さの違いです。
- インチネジは、ネジ山が粗く、谷も深いです。
- ミリネジは、インチネジに比べてネジ山が細かく、谷も浅いです。
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ネジの記号を見る
インチネジの記号はネジの呼びが、「No.0~No.12と1/4とか3/8」とかの分数表記がなされています。
更にその後に、山数、インチネジを表すユニファイ(並目)UNC、或いは(細目UNF)と続いて一連の記号となります。
「例」5/16-18 UNC 、3/8-24 UNF など
ミリネジは、メートル法を利用するネジと言う事で頭に「M」が付き、次に外径寸法だけをmmで単純に表します。細目の場合は、その後にピッチ(mm)が付記されます。
「例」M8 、M10×1.25 など
少々、専門的になりますが次にパソコンにより描いた製図(CAD)図面を掲載しますので、ご確認下さい。
インチネジとミリネジの重ね合わせ比較画像
比較のため、外径寸法d(8mm)がほぼ同じのインチネジ5/16-18 UNCと、ミリネジISOピッチM8を例にCADで筆者が書いて重ね合わせてみました。
山の角度は同じ60°なのですが、山の進み具合(ピッチ)の違いにより微妙に山がズレて行くのがお分かりになると思います。
又、谷の深さ(谷径d1)もインチネジの方が小さく深いのがお分かりだと思います。
インチネジの単体レイヤ図
インチネジ5/16-18 UNCの断面山形基本図です。
この場合の断面図と言うのは、ネジを真ん中から縦半分にスパッと割って、山の形を横から見た状態を表します。
レイヤとは、図面上に何枚もある透明な層の事で、筆者が使用している無料CADソフトJWCADではグループが16組あり、1グループに16枚の層がある事から256枚の透明な層があります。
外形図だけのレイヤ、寸法線だけのレイヤ、他の外形図のレイヤ、他の寸法線だけのレイヤを作成し、これら透明な層上に描かれた図面を重ね合わせたり、グレーアウトしたり、非表示にしたりして活用するものです。
1枚の図面上に全てを書き込むと、今回のようにそれぞれの単体図面表現が出来ません。
又、加筆修正も複雑でやりにくくなります。
パート毎にレイヤ図面を作成すれば単体表示や合成表示も容易となり、管理もし易くなります。
ミリネジの単体レイヤ図
ミリネジISOピッチM8の断面山形基本図です。
レイヤ重ね合わせ図
上記2つのレイヤ重ね合わせ断面山形基本図です。
外径寸法が近似でも、ピッチの違いは如何ともし難いですね。
青緑色の太い実線とハッチングしてあるものがインチネジのユニファイ並目ネジ5/16-18 UNCで、黄色の実線でハッチングしていないラインがミリネジISOピッチM8の外形線です。
レイヤー画像の基準点は、一点鎖線中心線の交点にして合わせています。
インチ細目ネジ山画像、ミリネジISOピッチ細目ネジは省略します。
山の角度は何れも60°なので同じですが、ほぼ同外径寸で比較すると、インチネジの方のピッチが13%ほど粗く、谷の深さも4%ほど深いですね。
まとめ
インチネジは、アメリカ。イギリスを中心とする英語圏で多く使われるネジ規格ですが、ほぼ同じ外径寸法でもミリネジに比べてピッチが粗く谷も深いネジで、さすが日本人の感性と違う豪快さを示す一例ではないかと思います。
ネジは、ありとあらゆる分野で使用され、その歴史も長く人々の生活に根付いているものですから、国による政策で規格が統一されたり変更になっても、そう簡単に変わるものではないでしょうね。
1インチから30インチのインチ関連記事については、下記からご覧下さい。
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